噴水広場
そこは見通しの悪い三叉路だった。

僕はここに一度来ただけで、意識的に来なかった。

ぽつりと彼女は答えた。

「私が死んだ場所」

そこは彼女が交通事故にあった場所だった。

「…もう、来たくなかった場所だった。ここに来ると、美智子が死んだことを認めることになるから」

僕らは三叉路の片隅にしゃがみ込んだ。

目の前を時々車が猛スピードで通り過ぎていった。

「あの日のこと覚えてる…?」

「…初めて喧嘩したんだよな」

「うん…覚えてるよ。あの日のことは全部覚えてる」
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