君が居た世界が、この世で一番愛した世界だったから。
「月城 輪廻 様」

その文字を見た瞬間に、グシャリと封筒の角を握り潰すように力を込めてしまう左手。
右手は咳をする時のようなポーズで口を抑える。

「つき…しろ、りん…ね、さま…。」

囁くように音を出す。
自分の名前を確かめる様に、その文字が、自分の名前であると、認める様に、声に出して、頭の中で納得させる。
瞳に映るのは、一文字、一文字、丁寧に書き上げられた繊細な細い文字。
見覚えのある文字が、瞳の中で揺れる。

私に読まれる事こそが、その文字達の生まれてきた意味だ、とでも言わんばかりに、その文字が私の中で主張しているみたいだった。
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