君が居た世界が、この世で一番愛した世界だったから。
カフェの入り口のドアと、ガラス張りになっている壁の所からは、外の様子がよく見えた。
チラチラと雪が舞っている。
緑色のはずの草が白く変化して、灰色の空を押し上げる。
どんよりと重たい空に負けないようにと、息吹くその姿は、とても健気で誇り高い。

「俺と一緒だね。」と、春の陽気の様に笑うその人は、この季節には似使わしくなかった。
そしてだからこそ、人はこの微笑みに焦がれるのだろう。
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