君が居た世界が、この世で一番愛した世界だったから。
「あれ、じゃあ…、もしかして!」

「そうだよ。」と笑う表情は、とても幸せに溢れていた。
その笑顔に、涙がこぼれそうになって、慌てて天井を見上げた。

「あの日、月城さんに相談した事、ちゃんと愛になったんだ。」

藤原さんは嬉しそうに笑った。
ここにもまた、無数の点と点を結んで、辿り着いた愛の形があった。
彼が掴んだ愛はきっと、果てしなく延びて、未来へと届くだろう。
この先に何があったとしても、彼は愛を理由に、失う恐怖を叫びはしないと思った。
ここにある微笑み全てで、「彼女」を包んで、守っていける。
藤原さんはとても、強い人だから。

「おめでとうございます!」

幸せは連鎖して、私の体も包んでくれている様に感じた。
二人の幸せを心から祈りたいと思った。

「月城さん。」

「はい。」

「あの日、君に告げた人の名前。
口にするたびに、儚くて刹那で、愛しくて。
産まれて最初に与えられる愛が、名前、なんだと思った。
だからこんなにも、名前を呼ぶだけで愛しいんだ。
名前を呼ぶだけで、こんなにも愛を認識できる。
君もそうであって欲しい。
そして必ず、君は君の愛を取り戻して。」

これは、僕からの君への愛、と藤原さんは悪戯っ子の様な顔をして笑う。
その表情は、私を強くしてくれた。
今までもずっと、その笑顔で私を励まし続けてくれていた。

私の名前を呼ぶ夜くん。
夜くんの名前を呼ぶ私。
心がこんなにも満たされるのは、それだけで、愛、だからなんだ。
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