君が居た世界が、この世で一番愛した世界だったから。

ピィーン…ポォーン…。

文字にすると間抜けに聞こえそうな、間延びしたインターホンが、立ち上がると同時に部屋に響く。

「誰だろう？」

八月中旬、夏休み真っ只中。
しかし今日の私のスケジュールは白紙だ。
来客の予定も無し。

せっかくの一人暮らし中なんだから、友達を呼んでパジャマパーティーするんだとか、両親の旅行が決まった時点ではあれこれと一人で勝手に予定を組んでは浮き足立っていたのに、いざ始まるとダラダラと夏の暑さのせいにしてはこうして怠けているだけだった。
両親が出掛けてもう二日過ぎた。
残り五日。どうして夏休みって、こうも終わっていくのが早いのだろう。

週三日程度で入っているカフェでのアルバイトも、今日はお休みだった。
目の前に山積みになっている宿題を、明日から本気出すと言い聞かせては、今日もまだ手をつけていない。

再び鳴るインターホンに、私は慌てて玄関に走り、ガチャリとドアを押し開けた。