君が居た世界が、この世で一番愛した世界だったから。
「アイス、食べてたの?」

これ以上溢さないようにと、お皿に乗せたアイスキャンディーは、もうほとんど液体と化している。

「あぁ…うん。アイスだったはずの物を…。」

「そんな残念そうな顔しないで。アイスならまた買ってあげるから。
何本でも。なんなら一生分。」

「…それは結構です。」

まさか断られるとは思っていなかったのか、夜くんはあからさまにしょげた顔をして見せた。
その表情反則、と思ったけれど言わなかった。
私ばっかりがときめいているみたいで悔しかったから。
その代わり、このまましょげられていても困るから、少しだけ夜くんの提案に乗る事にした。

「嘘ですよ。そんな顔しないでください。
冷凍庫に入り切れないくらい買ってくださいね。
夜くんが食べさせてくれたらもっと嬉しいなぁ。」

最後はほとんどが冗談。笑いを取るつもりで言ってみたのに、何故かふわっと抱き寄せられてしまった。
きつすぎない、眠気さえ誘うような…。

「君が望むなら。
だけどアイスだけズルイよ。輪廻に美味しくいただかれるなんて。
俺だって君の血肉になりたいのに。」

…何やら物騒な発言が聞こえた気がしたけれど、聞こえないふりをした。
それと同時に、分かった事がある。

「愛」って毛布みたいなものなんだって事。
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