心―アナタノモノガタリ―
憤 る
私は、待っていた。
この暗い部屋で。
彼らが帰ってくるのを。
ソファの上で膝を抱えて、じっと待つ。
壁にかかるひび割れた時計が刻々と時間を刻む。
チクタク、チクタク、針が数を数える度に。
ドキン、ドキン、と私の心臓が静かな部屋にやけに大きく響く。
時間が経つに連れて、その心音は大きくなっていく。
比例して、膨れ上がる不安と戦う。
暗くなった部屋で、ギュッと目を瞑る。
そして、もはや見放された神に祈るのだ。
「お願いです、神様。
どうか、彼らを無事に帰してください」
何も出来ない私に唯一できること。
時折手を組んで、窓の外の空を見つめて呟く。
外の空は、偽者だけれど。
見える月は、信じられないほどに美しい光を放つ。
偽者のクセに、神々しい。
偽者のクセに、祈ってしまうほどに美しい。
そうして、私はまた祈る。
あの扉が開かれるのを。
彼らがそっと入ってくるのを。
誰も、死んでいないことを。
もう、泣かなくて済むことを。
何度も失って、何度も涙を流した。
失うものが多すぎて、もう数えることはやめた。
だから、代わりに祈るのだ。
「どうかお願いです、神様……」