僕達の【愛のカタチ】
月日の経過と共に、彼女は老いを恐れ、恐怖心が大きくなっていった。
自身の外見·内面共に磨く努力は怠らない。
食事はバランス·カロリー·栄養素すべて計算し自らキッチンに立つ。
プロポーション維持のためにヨガ教室やジムに通い、汗を流す。
そして毎晩、お気に入りのローズオイルで丹念にアロママッサージを行う。
歳を重ねる毎に美しさは深みを増し、僕達の絆も強いものとなる。
毎晩一緒に薔薇の香りに包まれて愛し合った。
『今も、これからもずっと愛しているよ』
僕は毎日彼女に語りかける。
だけど彼女は否定する。
『私もよ。でも年月が経てば、醜くなっていくわ。
このままの姿で永遠にアナタの側にいたいの』
年月を経て老いたとしても醜くなるわけではない。その年月分女性はさらに美しくなるのだ。
そう説明しても薔子は頑なに否定し続ける。
いつしか不老不死を謳う宗教関係者と親交を深め、薔子自身も信仰するようになっていった。
僕等が愛を語る時間は、薔子の思想を語る時間へと変わっていく。
耐えられなかった……。
僕は薔子が年老いたとしても、ずっと愛する自信があった。
ずっと側にいてほしかった。
『アイシテル』
僕の言葉は、君の心に届かない。
“愛”という言葉が彼女の口から紡ぎ出されることはなくなり、夜になるたび懇願される。
『私を殺して。
若く美しい姿のまま、アナタの記憶に残りたいの!』
完全に薔子の心は壊れてしまった。