僕達の【愛のカタチ】
とうとう迎えた約束の日。
薔子の誕生日。
薔子がこの世に生を受けてから、30年目を越えた日。
願いが叶うよ、と僕は耳元で囁いた。
それは薔子のためだけのバースデープレゼント。
まるで心が壊れる前のように、薔子が満面の笑みを浮かべた。
以前のように愛を奏で、薔薇の香りに包まれる。
薔子が微笑む。
僕は本当に幸せだった。
『誕生日プレゼントは別の物に代える?』
聞いてみたが、答えは
“ NO ”
彼女の意志はダイヤモンドのように固かった。
休暇を取っていた僕等は、彼女の実家近くにあるローズガーデンを散策した。
色とりどり、多種の薔薇が咲き乱れていた。
薔子は嬉しそうに微笑み、薔薇の道を歩く。
『私は薔薇が大好きなの。
でもアナタのことは、もっと好きよ』
『僕も君の事が大好きだよ』
とても薔子が愛おしい。
半日ほどローズガーデンで過ごし、自宅に戻った。
外出中に準備は整っていた。
協力者に準備を依頼しておいたのだ。
自宅でのディナーだが、いつもより上質なワインを開けて食事をした。
赤い薔薇を部屋いっぱいに飾り、二人で祝うささやかな誕生日。
薔子も僕も幸せの絶頂にいた。
互いに愛する人と時間を共有する。
『幸せ過ぎて死んでしまいそうだ』
笑いながら僕は言った。
『ダメよ。アナタが死んでしまったら、私の事を覚えていてくれる人がいなくなってしまう』
薔子も笑顔で返してきた。
お互いに愛し、必要とし、狂っていたのだと思う。
そして僕は彼女にプレゼントを渡した。