家元の花嫁【加筆修正中】
其の伍
男の影≪隼斗の巻≫
2月に入り、“花見宴”の準備が始まった。
香心流では、新人のお弟子さんのデビューも兼ねて、茶席を複数用意する。
家元と俺は弟子の稽古で、毎日目まぐるしい日々を過ごしていた。
2月5日(金)、早朝―――――。
俺は母親と茶の稽古をしていた。
家元は昨日から、地方講演で不在。
「ねぇ、最近ゆのちゃんとはどうなの?」
「稽古中」
「いいじゃない、別に。お父さん、いないんだし?」
「別に変ったことは何も…」
「沖縄旅行と年末年始後は凄く良い雰囲気だったのに。初釜以来、なんかギクシャクしてない?」
「別に」
俺は痛い所をつかれて、返す言葉も無い。