家元の花嫁【加筆修正中】


勤務時間も終わり、厨房の片隅で。


「ゆのちゃん、今日は何しようか?」


「あの、正木さん。プレゼントにブラウニーをあげようかと思うんですが、どうですか?」


「ブラウニーかぁ。そうだなぁ…甘いのが苦手なら、ブラウニーも良いかもね?少しブランデーやラム酒を効かせて大人な感じも良いかも?」


「難しいですか?」


「う~ん、生地を均等に膨らませるのは少し難しいけど、大きめに作って良さそうな所をピックアップするのはどう?」


「それで大丈夫ですか?」


「あぁ。余りは砕いてパフェに入れれば大丈夫。」


「じゃあ、それでお願いします」


「了解!!」


私は正木さんからタダでお菓子作りを教わる代わりに、“新作アイディア”と“忙しい時のウエイトレス”を交換条件に店長と約束をしている。


だからこうして、お菓子作りをしながら注文が入れば…


「お待たせ致しました。カプチーノとブレンドコーヒーになります。ごゆっくりどうぞ」


毎日慌ただしく、接客とお菓子作りをこなしている。


正木さんは海外で有名な賞を取ったこともある凄いパティシエさん。


イケメンで明るい性格の彼は、雑誌でも取り上げられているほど。


教え方も上手で、この私……壊滅的に凄まじく料理音痴な私が…食べられる物を作るまでになった。


ホント、正木さん無しでは“バレンタイン”なんて悪夢の日でしか無かったのに…。


今では、待ち遠しい“バレンタイン”になった。


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