家元の花嫁【加筆修正中】
「あの、ご隠居?その……」
「隼斗。家元とはな、お茶を愛する者達の頂点に立つ者の事を言う。旨いお茶を点てれば良いと言うものではない」
ご隠居が席を立ち、手でここへ座れと促している。
俺は再びゆのの隣りに腰を下ろした。
ご隠居は俺らの前に腰を下ろし…
「香心流の家元継承の条件は?」
ご隠居が尋ねてくる。
「24歳の誕生日までに婚姻する事」
「そうだ。家元である前に、1人の男として生涯愛すべき女性を迎えることだ」
俺は横に座るゆのに視線を…
「ゆのさんはお前の点てた茶がお前自身を表し、お前の優しい性格を十分理解していると…それにわしの茶がわしの人生を表していることも理解できる女性だ」
ご隠居がゆのに笑顔を向けた。
ゆのは照れくさそうに下を向いて…
「家元としても、1人の男としても…ゆのさんとならやっていけるだろう」
「ご隠居…」
「ゆのさん。これは先代家元では無く、隼斗の祖父としての願いだ。どうかいつまでも…隼斗の事を宜しく頼む…」
ご隠居はゆのに深々頭を下げた。
「頭を上げて下さい。お願いするのは私の方です。見ての通り、今日高校を卒業したばかりです。至らない所だらけの私がお役に立てるか分かりませんが…生涯隼斗さんのお傍にいたいと存じます。何卒宜しくお願い致します」
ゆのもまた…深々…頭を……。
2人して…頭を……。