君が見上げたあの空は
玉兎が下がってから、小春は唇を尖らせた。



「歩美ぃ。痛かったんだけど」

「アンタが、失礼丸出しだったからよ」

「だって、どっちも居ないんだもん」



幸雄は苦笑した。



「そんな日も在るって」

「でもぉ…」

「状況を楽しまなきゃね」



小春は押し黙った。

歩美は内心、感心していた。

小春を押さえるのに、こんなに穏やかな方法が在ったなんて。



「向井くん、上手いね」



知らず、歩美は口を開いていた。

蒼意は幸雄を指して、意地悪そうに笑った。



「コイツ、ナンパ師だから。のっぺさんも、はるるんも、気ぃつけなよ」

「ンだと、テメェ、コラァ!」



幸雄は蒼意の首を絞めた。




< 110 / 132 >

この作品をシェア

pagetop