君が見上げたあの空は
愛歌との夕食を終え、片付けをしていると、家の電話が鳴った。



「ちょっと、ごめんなさい」



愛歌はぱたぱたと、小走りして、受話器を持ち上げた。



「はい。恋ヶ窪です」



歩美は、カチャカチャと食器を洗う。

この、汚れを落として、ものをキレイにするのは、好きだな。



「…はい。確かに、こちらに。…はい。今、代わります」



愛歌は少し険しい顔を、歩美に向けた。



「歩美さん。お電話。歩美さんにって」



歩美は、不思議に思った。

あたしに、電話?

小春?

違う。

あのコなら、携帯電話に掛けてくるはず。

しかも、この家の電話番号は、知らないはずだ。

…誰だ?



「…もしもし。お電話、代わりました。野原です」

「歩美」



応えた声に、背筋が凍る。



「…母…、さん…」




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