君が見上げたあの空は
「歩美。アレに、襲われかけたそうね」



氷に触れる様に、歩美は、凍え、焼かれ、離れたかった。

しかし、清美は、それを許さない。



「しかも、今は、関係ない他人様の家に居候」



受話器の向こうで、大きな溜め息がつかれた。



「本当に、どうしようもないコ。自分の無力と、厚顔さを恥じなさい」



歩美は、唇を噛んだ。



「応えることも出来ないの。人形め。苛々する。手間や迷惑ばかり掛けさせて」



歩美は、愛歌の心配そうな視線には気付いていたが、身体中が、凍った様に、動かなかった。



「明日、お前を取りに行く。荷物をまとめておけ」



そう言って、清美は電話を切った。

歩美は、受話器を置くことも出来なかった。




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