君が見上げたあの空は
「…歩美さん」



歩美は、受話器を置いた。



「…愛歌さん。短い間でしたが、ありがとうございました」

「…お母様と、暮らすの?」

「…はい。そうなると思います」

「ここに残っても、いいのよ…?」



歩美は、一瞬、その可能性にすがりかけた。

自嘲し、首を横に振った。



「いけません。これ以上、愛歌さんのお世話になるわけには…」

「それが、貴方のお母様の、言付けだったのかしら…?」



歩美は薄く笑い、口を開いた。



「これは、罰なんです。あたしは、あの人に従わなければならないんです」




< 119 / 132 >

この作品をシェア

pagetop