君が見上げたあの空は
歩美は、自室に入り、荷物を置いた。

拳を握り、頬を打った。

懐かしい。

愛歌さんの手。

言葉。

笑顔。

暖かさ。

もう、触れることもないだろう。



「…うぅぁ…。くっ…」



泣き声を上げれば、あの人は、あたしを黙らせるだろう。

霞む視界を塞ぎ、頭を抱えた。



「あぁぁ…」



嫌だ。

どこか、どこでもいい。

ここでない、どこかへ。

旅立ちたい…!



「空知くん…」



なんで自分が、その名前を呼んだのかも、解らない。

ただ、無性に、会いたいと思った。



< 124 / 132 >

この作品をシェア

pagetop