君が見上げたあの空は
コン・コン…。

扉を叩く音に、目を開ける。

…あたし、眠ってたんだ…。

コン・コン…。

誰だろう。

…母さんではないだろうな。

あの人は、あたしに関わろうとしないだろう。

コン・コン…。

目を擦り、扉を開く。



「歩美お嬢様」



扉の向こうには、長身を燕尾服に包んだ、端整な顔立ちの青年が居た。

青年は、恭しく、頭を下げた。



「御初、御目に掛かります。自分は、歩美お嬢様の御世話を仰せつかった、高城一騎と申します」

「はぁ…?」



母さんが言ってた、護衛の人…?

護衛っていうか、執事っぽい。

燕尾服、着てるし。



一騎は銀の腕時計を見て、歩美の手を引いた。



「ご就寝なさる前に、お風呂に入りましょう」




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