君が見上げたあの空は
一騎がナイフを下ろすと、小春はへたりこんだ。

歩美は小春を抱いた。



「…小春」

「歩美ぃ…」



歩美は一騎を睨む。



「…高城さん。どういうつもり?」

「歩美お嬢様を傷付ける可能性は潰せ、と、清美様から」



顔色一つ変えない一騎に舌打ちして、歩美は、一騎の背後に見え隠れする、清美の影を睨んだ。

…あの人は…。



「高城さん。小春が、あたしを傷付ける可能性は、とても低い」

「しかし、その可能性は、看過出来かねます」



歩美は、薄く、笑った。



「今、あたし、舌を噛みきって死ぬかもよ」

「舌を噛みきっても、中々、死ねませんよ?」




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