君が見上げたあの空は
借りたものを鞄にしまっていると、歩美の前を青いなにかが通り過ぎた。

なにか、と言っても、歩美の記憶の中には、この大きさの、この色のものは、空知蒼意以外には無い。



「空知くん。また、屋上にいたの?」



蒼意は立ち止まり、ふにゃりと笑った。



「のっぺさんは?」

「図書館に居たの」

「静かで、暖かくて、眠り易いよね」

「本を読んでたのよっ!」



蒼意は目を丸くした。



「…難しい本を読むと、眠くなるよね」

「眠ってない!」



蒼意は口笛を吹いた。



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