君が見上げたあの空は
歩美はしまいかけた本を取り出した。



「この人の、凄いよ。空知くん、知ってる?」



蒼意は一瞬、表情を強張らせ、いつものふにゃりとしたものではなく、どこか哀しげに微笑んだ。



「千鳥美羽か…。うん。…いいよね」



歩美には、その違いがなにを意味しているのか、判らなかった。

歩美には、その違いを見付けることも、出来なかった。



「もう、文学性がなんたらとか、言わせないから」



蒼意は声を出して笑った。



「な、なにが可笑しいのよっ!」

「のっぺさん」

「なによ?」

「千鳥美羽は、まだ早いんじゃないかな」

「…馬鹿にすんな」



歩美は思った。

どこまでもコケにしやがって。



「じゃあねっ!」



怒鳴り、歩美は大股で歩きだした。



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