君が見上げたあの空は
青年は近衛誠と名乗り、ベンチの裏の店に、歩美を通した。

店内には、他に客は居なかった。

戸惑う歩美をよそに、誠は毛布を片付け、カチャカチャとなにごとかの用意を始めた。



「えっと…」

「適当に座って。今、淹れるから」

「あの、け、結構です!」



誠は手を止めた。



「紅茶より、珈琲の方がいいかな?」

「いや、あのっ」

「ジュースも有るよ」

「そうじゃなくてっ!」



歩美は鞄を抱いた。



「…なんのつもりですか?」



誠は首をかしげた。



「…ちょっとしたお節介兼新規のお客さん確保、かな」



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