君が見上げたあの空は
授業が始まって少し経った頃、歩美はちらりと、蒼意の様子を窺った。

蒼意は窓を開け、外を観ていた。

小さく溜め息をつくと、歩美の背中がつつかれる。



「歩美ぃ。今、空知くんのこと、見てたよね?」



振り返ると、ニヤニヤと笑う、茶髪でウルフカットの少女がいた。



「なによ、小春」

「別にぃ?」



小春は笑顔を崩さない。



「やっぱ、授業中も、気になっちゃうんだ?」

「風紀委員として、ね」

「ふぅん?」

「…なにが言いたいのよ?」

「いやいや…。ネガティブな感情から意識し始め、役職の為に触れ合いを重ね、やがて始めに抱いていた感情は、恋へと変・わ・る…」

「変わるか、この、ボケっ!」



小春の頭を叩く。



「いった~い。歩美の、更年期障害!」

「あたしは女子高生だっ!」

「生理不順!」

「なってない!」



教師がわざとらしく咳払いをした。



「あー…、野原と桜庭。静かにしてくれ」



教室にささやかな笑い声が響く。

歩美は唇を噛み、また、ちらりと、蒼意の方を見た。

蒼意は変わらず、窓の外を観ていた。


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