君が見上げたあの空は
青年に連れられ、歩美は一軒のアパートの前に居た。



「ここは…?」

「頼れるお姉さんの家です」



青年はチャイムを鳴らした。

しばらくして、玄関が開く。



「待ってたわよぅ、小日向くん」



尻尾の様な長い三つ編みの女性が、顔を出した。

青年は頭を下げた。



「夜分遅くにすみません。恋ヶ窪先輩」



女性はころころと笑った。



「いやねぇ、かしこまっちゃって」



女性は歩美に手を伸ばした。



「貴方が、小日向くんの言ってたコね。恋ヶ窪愛歌です。よろしく」



歩美は、伸ばされた手の意味を理解した。



「…野原歩美、です…」



愛歌の手を軽く握ると、力強く、握り返された。


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