君が見上げたあの空は
青年と別れ、歩美は玄関の内に入った。



「小日向くんから、少しだけだけど、事情を聞かせてもらったわ。落ち着くまで、ここを自分の家だと思ってね」



そう言って、愛歌は微笑んだ。



「…はい。…ありがとう、ございます…」



鞄を抱いて、頭を下げた。

愛歌は自身の髪をつまんだ。



「お揃いねぇ」

「…はぁ…」



愛歌はころころと笑った。



「ご飯は、食べたかしら?」

「…紅茶しか…」

「あら。あらあらあらぁ。いけないわ、育ち盛りの女の子が」



愛歌は手を合わせた。



「今、なにか、用意するわ。それまで、お風呂にでも、入ってて」



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