君が見上げたあの空は
歩美は用意された服に着替え、リビングに入った。

愛歌はちゃぶ台に皿を広げてる手を止め、視線を寄越す。



「あら。あらあらあらぁ。着替え、少し、大きかったかしら?」



袖も裾も肩幅も腰周りも余らせて、歩美は唇を噛んだ。



「…あたし、ガリガリなんで」



愛歌はふふふと笑った。



「いっぱい食べて、すくすく育ちなさい」



歩美は思った。

アンタは、オカンか。





そして、心の中で、自嘲した。





歩美は思い出せなかった。





自分の母親に、そう言われた記憶を。




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