君が見上げたあの空は
「あら。あらあらあらぁ」



愛歌はティッシュを引き抜き、歩美の目元に当てた。



「…うん。…綺麗だわぁ」



愛歌は優しく微笑んだ。

歩美は自覚した。

あたし、泣いてるんだ。

そう思った途端、嗚咽が漏れた。



「いいのよ。それでも」



愛歌は歩美を抱き締めた。



「それでも、いいのよ」




歩美は、産まれてから今までの、泣かなかった分を全て清算するかの様に、長い間、泣き続けた。


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