君が見上げたあの空は
歩美が泣き止んだ頃には、用意された食事は、すっかり冷めていた。

温め直すかと訊ねる愛歌に、首を振って応える。

歩美は思う。

あったかい料理は、冷めていようが、温かい。



「いただきます」



料理に口をつけると、熱いものがこみあがってきて、歩美は幾度となく、箸を止めた。

愛歌は優しく微笑み、じっと、歩美を見守った。





「ごちそうさまです」



歩美は手を合わせ、言った。



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