君が見上げたあの空は
小春にせがまれて、歩美は放課後、誠の店に二人で行った。

林の前に、小春は不安げに言った。



「ホントに、ここ、通るの?」



軽く返事をして、小春の手を引く。



店の扉を開けると、エプロン姿の誠が微笑み頭を下げた。



「いらっしゃいませ」



小春は、歩美が挨拶を返すより早く、席に着いた。



「あっゆみぃっ、早く、早く、んでもって、近衛先輩を!」



歩美は溜め息をついた。



「すみません。あんなアホ、連れて来ちゃって」

「賑やかで、結構ではありませんか」

「…なんか、丁寧ですね」



誠は顔を寄せて囁いた。



「この前、あの後で、玉兎さんに叱られちゃって」

「なるほど」



それに、と、誠は微笑んだ。



「ああいう人って、案外、馬鹿に出来ないものだよ」



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