君が見上げたあの空は
誠が淹れたという紅茶は、やはり、歩美を旅へと誘うことはなかったが、満たされる感覚は変わらなかった。

二人は軽く食事を済ませ、店を出た。

小春は上機嫌に鼻歌を歌った。



「近衛先輩のメアドゲット~」

「…アンタ、よくやったよね」



結局、誠は小春に根負けして、連絡先を交換していた。



「あぁん。いったい、どんなお話が聞けるかなぁ…」

「現実に起こることなんて、タカが知れてるでしょ」



小春はちちちと指を振った。



「事実は小説より奇なりっていうじゃん?」

「アンタ、そんな言葉、知ってたんだ」



小春は顔の片側だけで睨む。



「なにぃ。馬鹿にしないでよ。私は歩美とタメだよ?」

「そうだっけ?」

「にゃあぁっ、もうっ!」



小春は頬を膨らませた。




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