君が見上げたあの空は
歩美はキッチンに立って、包丁を取り出した。

既に日の光は無く、電灯を反射して、手元の刃は輝く。





歩美はしばらくの間、見とれていた。

…綺麗だ。

刃物は、それまで斬ったものに応じて、輝きを変える。

きっと、この包丁は、包丁として、正しく扱われてきたものだ。





…そして、今、あたしは、貴方を汚す。





歩美は包丁を振り上げた。




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