君が見上げたあの空は
「歩美さん」



歩美は応えられない。



「私ね、悲しくはないわ」



愛歌の声は、落ち着いていた。



「ただね。…私の、勝手で、偉そうな言葉なんだけどね」



歩美は、愛歌の言葉を待った。



「悔しいの。…とっても」



歩美には、思い付かなかった。

愛歌が泣いている理由が。

悲しくないのなら、なぜ?

悔しい、なにが?



「私は、貴方と一緒に、隣に座ることは出来なかったのかと思うとね」



愛歌は続けた。



「…私には、そこにいることも出来ないのかと思うとね」



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