君が見上げたあの空は
歩美は唇を噛んだ。

しかし、嗚咽は止まらない。



「…愛歌さんは、確かに、…そこにいます…」

「でも、ここからじゃ、貴方を抱きしめることも出来ないわ」



歩美はかたく、瞼を閉じた。



「…仕方無いんです。あたしは…」

「貴方は…?」





「…もう、どこにもいないんですから…」





歩美の嗚咽は大きくなり、叫びになった。





崩れ、膝をつき、涙を拭うこともせず、身を折って、叫び続けた。




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