君が見上げたあの空は
泣き叫ぶ歩美を、愛歌は、前と変わらず、優しく、抱きしめた。



「歩美さんは、思うのかしら」



その声は決して、大きいものではなかった。



「自分が嫌だって」


しかし歩美には、確かに聞こえていた。



「自分であることをやめられたらって」


魔法の様にすらすらと、愛歌の言葉は紡がれる。



「自分なんか、どこからもいなくなってしまえばいいって」



歩美は、弱々しく、頭を下げた。




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