君が見上げたあの空は
「…あたしは、傷だらけです」

「あら。おめでとう」



歩美は愛歌を睨んだ。



「…馬鹿にしてるんですか?」

「まさか」

「じゃあ、なにを…」





愛歌はふふふと笑った。





「貴方は、傷つくことが出来た。本当にどこにもいないのなら、傷ついたとも感じない」





歩美は唇を噛んだ。



「…前は、確かに、そうだったかもしれません。でも、今は、どこにもいない…です」

「そうかしら。たとえ、すりつぶされていたとしても、それは、消えて無くなるのとは、違うんじゃないかしら?」



愛歌は歩美を指した。



「貴方には、まだ、噛みしめるものも、抱きしめるものも、有るじゃない」



< 85 / 132 >

この作品をシェア

pagetop