君が見上げたあの空は
「あたしが…抱きしめるもの…」

「どういうときに、貴方は情動を感じるのかしら?」



歩美は思い出そうとした。

蒼意に納得していないあだ名で呼ばれること。

押し付けられた風紀委員会の仕事。

自分のことを、解った風に話されたとき。

父親の高圧的な態度。

父親の虐待。

守ってくれない母親。

無力な自分。

感動が出来ない自分。

もう、旅立てなくなった自分。



「…あたしは…」



歩美は深く、息を吸った。



「あたしのプライドを、抱きしめているのかもしれません…」



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