君が見上げたあの空は

影はたたずむ

野原歩美は、屋上への扉を開いた。

中央辺りまで足を進め、横たわる。



「空知くん」



歩美は問い掛ける。

隣に寝転がる蒼意に向かって。



「空知くんは、なにを見てるの?」



蒼意は一言で応える。



「空を」



歩美は空を見上げた。



「…綺麗」



歩美は、率直に、そう思った。

深く澄んだ青。

ふよふよと、しかし、確かな形を持った、白い雲。

綺麗だ。

…でも。



「…綺麗、としか、思えない…」



歩美はなんだか、寂しい様な、切ない様な気分で言った。



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