君が見上げたあの空は
歩美は、鞄を持って立ち上がった。



「ちょっと、本、返して来る」

「前のアレ?」

「そ。ちゃちゃっと行って来る」



小春は泣き真似をして、目元を拭った。

「ああ…。行ってしまうのね、アナタ…」

「バリエーション、増やしたら?」



小春は唇を尖らせ、蒼意と幸雄を両脇に抱え込んだ。



「いーもんね、歩美が冷たくっても、私には、二人がいるもんねー、だ!」

「いやん。桜庭さんったら、ダ・イ・タ・ン…」

「ふふ、はるるん。俺と幸雄を、いっぺんに相手しきれるかな?」



騒ぐ三人を置いて、歩美は図書館に向かった。



< 96 / 132 >

この作品をシェア

pagetop