君が見上げたあの空は
図書館には、相変わらず、静寂が満ちていた。

返却カウンタの図書委員に、借りた写真詩集を渡すと、歩美は鞄がだいぶ、軽くなったのを感じた。

せっかく来たんだし、なにか、借りて行こうかな?

歩美は本の森を見据えた。



「旅は出来たかしら?」



振り返ると、眼鏡をかけた、ふわふわとした長い髪の女性が居た。

歩美が返答に困っていると、女性は声を出さずに笑った。



「ごめんなさい。貴方、千鳥美羽の写真詩集を借りてくれたじゃない?」



そう言って、女性は目を細めた。




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