君が見上げたあの空は
「えっと…」



歩美は考えた。

誰だ、この人?

なんで、あたしがその本を借りたことを知っている?

女性は自分の胸を指した。

そこは、豊かな女性性を主張していた。



「司書の奥野響。まあ、名前なんて、いいか」



それより貴方、と、響は続ける。



「千鳥美羽の写真詩集を持って行ったじゃない?」

「は、はい…」

「どうだった?」



響は、眼鏡の奥の瞳を、子どもの様に輝かせて、歩美に詰め寄った。




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