優しさの理由
全く兄貴は…




『しょうがないな、兄貴は
鈴、俺の分食べな』


泣きそうな表情で兄貴を見ていた鈴に、自分の分を差し出した。


「えっ…でも」

『いいから。鈴食べるの楽しみにしてたんでしょ』


優しい口調でそう言うと

鈴は遠慮がちに

小さくコクンと頷いた。




「…美味しい。空ありがとう」


鈴は嬉しそうに笑顔でそう言った。


やっぱ鈴は笑顔じゃないと…




「全く…空の分食べちまって
ブスが食い意地ばっかはってんじゃねぇよ」


兄貴はまた喧嘩を吹っかけるようにそう呟いた。


「ブスってね…」

『鈴はかわいいよ』

「へっ??…」


鈴の言葉を遮った俺の言葉に


鈴は驚いて黙ってしまった。



俺の正直な気持ちなのに…


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