岬の夕陽
車窓から見えるすっかりと古ぼけたその漁船は、かろうじて「さくしま丸」という文字が読める程度で、もうすでに船と言うよりは、朽ち木の固まりといった感じだった。

高島史郎はこの岬を訪れるたびに、まるで自分が浦島太郎になったような気分になる。

45年前に初めて訪れた時には漁港として栄えていたこの場所も、今では近隣に工場が出来てしまい様相は一転した。

海の色も変わり、空もどんよりとした曇り空が似合う場所になってしまった。
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