《中》マケイヌとカチネコ
結局、俺は佐吉のテントの中に連れて行かれた。
ようやく放心状態を抜け出したので、静かに頭の中を整理しようとした。
ところが、近くでは七谷親子が口喧嘩──喧嘩というよりも、佐吉が一方的に娘に怒鳴られている状況──をしていたため不可能だった。
というのも、他の者たちは各々自分のテントから、CDだとか、本だとか、漫画だとかを持ってきたらしく、時々鼻歌や笑い声がする程度で、テントの中は静まり返っていて、その分、娘の声はよく響くのだ。
つまり、整理しようと格闘する俺の頭に入り込んで、邪魔をするには十分すぎる環境だったというわけだ。
そうこうしているうちに、先程の遠足タイムで、"ここは何処だ"ということを聞き忘れたことに、今更気が付いた。
「…おい。」
「ぁあん!?」
───マジかよ親父のとばっちりだよ。