《中》マケイヌとカチネコ
走り去って行く佐吉を、冷ややかな目で見る人物は、俺1人ではなかった。
「なんでアイツ…この時だけあんなに体力あるんや…。」
右隣を見ると、佐吉の背中が消えた方向──僅か約100m先の佐吉のテント──を、歌誌葉は呆れたような、遠い目で見つめていた。
「またでアルか!?汰輔!!気を付けるアル!!」
その状況を見かねたのか、真怨がやって来た。
「……俺は…なにも…してない…。」
「真怨!汰輔は何も悪くないやん!」
歌誌葉が汰輔を庇う。その直後に汰輔が一瞬、小さくガッツポーズをしたのを俺は見逃さなかった。
「佐吉が可哀想アルよ!」
「また訳分からんこと言うて!!汰輔は、お礼を言うてくれてるだけやないの!!」
「佐吉も言ってるアルよ!」
「アイツの言い方は気色悪いねん!!」