遠い距離


「…………もしもし?」




携帯を持っている反対の手で、俺は口を抑えながらくぐもった声で"わざと"話した。


こんな声、海希達だって聞き取れないはずだ。




「       」




彼女が何かを言った。
発音がぐちゃぐちゃで、はたから聞けば何を言っているのか分からない声だった。


だけど俺には『もっと大きな声で。』と言ってる様な気がした。


大きな声じゃないと、聞こえない……と。
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