遠い距離
『でも、今は……他に大切な人が居ます。』
『私も居る。――…こんな私のことをずっと待っていてくれている人が。』
『俺も……彼女には待たせてばかりで…カッコ悪い所しか見せていないけれど……これからはきちんと胸を張って好きだと言いたいんです。』
たとえ、彼女が俺に不信感を抱いていたとしても……今度は俺が彼女を振り向かせてみせる。
『……だから今日ここに来てくれたんですね?』
―――恐らく彼女は俺を試したんだ。
俺が彼女と向き合ってくれる、きちんと語り合うべき相手なのかどうかを見定めるために。
だから、アドレスも交換せず、待ち合わせも彼女が前みたく突然訪ねるのではなく、喫茶店を指定した。