遠い距離


「本当にありがとうございます!」




「光る綺麗なペンダントだからすぐ見つけれたよ。……素敵な形見だな。」




「本当に何てお礼を言ったら良いのか……」




「下流まで流されてたのを拾っただけだし、大したことじゃない。……手伝ったのはただの気まぐれだから。それじゃあ!」




彼は余程気まずいのか走り去ってしまった。


私にわざわざ傘を残して―――…


―――――――――――――――




あの雨で流れの速い川に迷うことなく飛び込んでくれた。


私を助けてくれた。



そして何より母の形見を綺麗だと言ってくれた。



大雨だったし、あまり会話もしなかったから、


樹はそんなこと覚えてないだろうけどね。
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