ホームレスな御曹司…!?
「知香の涙、甘いな?」


溢れるのは涙だけでいい。


気持ちはぶつけられないから。


店長さんが教えてくれた“素直な心”。


あたしには。


やっぱり見えないんだよ…。


近文さんの唇が、頬をつたうあたしの涙を追う。


バカみたいにドキドキしてるのは、あたしばっかり。


わかってるのに目を閉じた。


「知香…」


甘く囁く声を発した近文さんの唇は。


あたしの唇へ───。


味わうようにゆっくりと唇が重なり合う。


近文さんの熱い舌があたしの中の心をかき乱す。


「ん…」


感じたい。


もっと近文さんを感じたい。


離れそうになる唇を。


あたしは追った。


長く熱いキスを繰り返し、唇は離れる。

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