ホームレスな御曹司…!?
「知香?」


「でも…あたし、やっぱりダメだと思うんです…」


「何が?」


「近文さんは御曹司で…あたしは…」


「何だよ、ソレ?」


「身分の違いは、気持ちだけじゃ越えられません…」


「だからさ、オレ言ったよな?知香の中ではくたびれてて、いつも空腹で、何も持ってない根無し草のオレだから、って。オレはグループの社長である前に、御曹司である前に、知香を想うちっぽけな男なんだよ」


こんなに優しく。


こんなに甘く。


こんなに狂おしい程に響く近文さんの愛しい声は。


あたしの心を解き放ってしまう。


どうしようもなく溢れる心は。


涙となって流れてく。
< 170 / 206 >

この作品をシェア

pagetop