ホームレスな御曹司…!?
都内を走って高級住宅街、無駄にデカイ門をくぐり、家へ到着。


「さ、降りろよ」


「………」


知香は動かない。


思い詰めたようにバッグを持った手元を見つめて、体を強張らせる。


「知香?」


「あの…」


「ん?」


「怖いんです…」


「何が?」


「身分の違う一般人のあたしなんか…門前払いじゃないか、って…」


「何言ってんだよ?母さんとは毎日仕事一緒だし、親父だって知香の事知った上で会わせろ、っつってんだぞ?」


「あたし…帰りたいっ…!」


ポロポロと大きな瞳から涙が零れた。


過去に何人もの女の涙を見てきたけど、知香の涙はソイツらとは違う。


もっとピュアで無垢で儚げで。


この涙を見ると、自然と手が伸びる。


拭ってやりたくて。


背負ってやりたくて。


オレは知香の涙を拭うんだ。
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